『ゼロの焦点』#1 ウーマン・リブ
主人公はみんな女性
木村多江さん、中谷美紀さん、広末涼子さん。無意識で好きな順に書いてしまったが、これでもかと「主役は女性です!」と押し出しているようなキャスティング。それでも観るきっかけ(少なくとも僕にとっては)になるのだからこういうインパクトも時には必要だと思う。
女性の地位が低い時代。そんな戦後の鬱屈とした雰囲気を画面の端々に見ることができた。終始漂う砂埃のような空気感も嫌いじゃない。
ただ、良くも悪くも現代では伝わりにくい時代を描いている。
初の女性市長誕生という背景に寄り添うように物語は進んでいく。夫の謎の失踪を調べるために一人旅立つ女性。騙されていたのに救われていた女性。現在を生き、未来を見据える女性。求めるもの、捨てるもの、憧れるもの、そういった全てのベクトルが女性という始点から伸びているように感じた。
そういうことから、日本での「女性」の変遷を知っているほど深く楽しめる物語と言える。
大学時代はジェンダーゼミ
大学のゼミで「ジェンダー」を選択していたせいもあると思うが、まっさきに思い浮かんだ言葉は「ウーマン・リブ」。犯人が誰とかそんなことよりこっちに考えが引っ張られてしまった。 「ジェンダーとセックスの違いはねえ……」なんて言っていたあの頃が懐かしい、いや、恥ずかしいよ。
ジェンダーとは(中略)4. 社会科学の分野において、生物学的性に対する、「社会的・文化的な性のありよう」、または「女性」と同義として使われる場合がある。
「ジェンダー」 『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』 2014年8月7日 (木) 08:38 UTC URL: http://ja.wikipedia.org
ウーマン・リブ(英語: Women's Liberation)とは、1960年代後半にアメリカ合衆国で起こり、その後世界的に広がった女性解放運動のことをいう。 フェミニズム及びジェンダーの原点ともいわれ、19世紀後半から20世紀前半にかけて起こった女性の参政権運動を第一波フェミニズム、ウーマン・リブを第二波フェミニズムと呼ぶこともある。
「ウーマン・リブ」 『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』 2014年7月23日 (水) 13:38 UTC URL: http://ja.wikipedia.org
当時書いた論文は確か「男らしさと女らしさ」みたいなものだったと記憶している。それぞれの「言葉づかい」に焦点を当てたようななんとなく卒論だ。とりあえず卒業はできたが、もう一生、自分にも誰にも読んでほしくない仕上がりだったことはしっかり覚えている。あの時にこの映画を観ていたらもう少し良い方向に……などと考えてしまうぐらいには面白く、考えさせられる内容だった。手放しに褒められるかといったらノーコメントで。
勉強する理由
小説が好きでジェンダーを専攻して、それでなんでこの作品に辿り着かなかったのかと、いまさらになって自分の不勉強を痛感してしまう。
多くの人が思うであろう「もっとちゃんと勉強すれば良かった」という後悔は、こうして年を重ねて様々な作品に触れる度に頭の中でぐるぐる回る。知的になるためというより、「もっと深く楽しめたはずなのに」と落胆することが増えてしまう。
それでも、こうして何らかの引っ掛かりを感じられたというのなら、あのぐうたら過ごした数年間も全くの無意味ではなかったということなのだろうか。
なんのために勉強するか。そんなことは分野によって違うのだろうけれど、浅く広く、全般を通して言わせてもらうのなら、「映画や本をもっと楽しむため」なんていう答えも悪くないのかもしれない。